635 on time 改め、ゴースト・武蔵小山の幻

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何も思い出せない。いや、正確に言うと忘れようとしているのかもしれない。

週末のAM6:35。薄明るい空。嬉々として旅先に向かう親子、足早な休日出勤、パンを焼くいい匂い。看板を下げる店主と帰らない客、そして、千鳥足。武蔵小山らしい人間交差点がそこにある。確信はあった。自信に満ちあふれた顔つきの私は自己陶酔の末、【635 on time】というウィットに富んだタイトルを思いつき、ニヤつきながら早起きを決意した。

軽く飲んで早く帰ってぐっすり寝よう。

ボタンの掛け違いは正にここから始まった。いつもと違う店で一人静かにグラスを傾ける、カウンターには私以外いない。中の人間と軽く話していると店の電話が鳴る、どうやら空席の確認らしい。しばらくしてグラスが空になった頃、2名様ご来店、知合いだった。カウンターの中でそのお客さんの名前を連呼していたので、誰が来るか見当はついていた、つまり、待っていた。奥の個室に入った2人に軽く挨拶し、先に帰る旨を伝えるが、つれない事を言わずそこに座りなさいという。勿論期待していた。結果乾杯、久々の再会に加え、会う筈ない場所での遭遇、不可抗な力に釣られ場は盛り上がる。2杯目を注文、一人が誰かに連絡を取る。3杯目を注文する頃にはまた別の知合いも合流し、4杯目、ボトルを入れようという話に。そして2本目、何か大きな力が働いているかの如く人は増え続け、寝る奴も現れ出した。宴もたけなわ、一時は膨れ上がったメンバーも6人まで減り、ボトルは3本空き、時間は5時をまわり閉店の時間で解散。

取材の時間も迫っている。カフェインを摂取して目を覚まそうと、まだ開いていそうなBARに向かった。コーヒーを2杯飲み自分の酩酊状態を確認した頃、約束の時間になり同行記者が現れる。何故かニヤついていた。

外に出るとニヤつきの原因は直ぐわかった。同時に焦った。薄明るいどころか完全な朝、とても清々しい朝。構想と違う。「だから言ったでしょ、日の出6:06だって。」正確な情報を持つ物は何より優れる、といった面持ちでまたニヤつく。

大きな荷物の親子連れも、仕事の出来そうな女性も、看板を下げる店主もいた。ただ、自らが(千鳥足A:アーノルド小山)で人間交差点を歩く事になるとは全く思考の枠の外だった。なんとか他に千鳥足はいないかと、すがる気持ちで街を徘徊するも、私以外に千鳥足は皆無。おぼつかない足取りで街の写真を撮るサングラスのモジャモジャは、白い目で見られるどころか、アンタッチャブルよろしく徹底的なスルー。街全体から無視されている様な恐怖感から、ゴースト/NYの幻みたい、と、大して上手い事も言えなくなり、ついには同行者にも呆れられ、「酷いね…帰んな」と、ウーピー・ゴールドバーグの様な微笑みで諭された。あの時、微笑みの中にあったひどく冷たい目だけは今でも鮮明に焼き付いている。それ以外は全く思い出せない。

その後の事も覚えていない。いや正確にいうと日付が変わってからのほとんどが記憶に無い。駅前の時計の6:35を収めようとしていた事すら忘れ、家の時計で写真を捏造する羽目になってしまった。

アンチェイドメロディに針を落とし、ろくろを挽きながら心を鎮め、早く忘れてしまおうとしたものの、そもそも何も覚えちゃいなかった事に気付く。まだ24時間経っていない事が信じられない。全て幻だったと思う事にした。

アーノルド小山

アーノルド小山記者(キャラ担当)

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たまに会えたりするぜ。いつも酔っ払ってるからこっちは覚えてないが。

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